くどく
ジムの風呂で、シャワーの順番待ちをしていたら、前の奴が温度調節のレバーをわざわざ「冷水」側にひねってから席を立った。
次に使う僕がその動作に気づいていたからいいようなものの、気づかなかったらこの真冬に、盛大に冷水シャワーを浴びるところだった。死ぬる。
彼の意図するところはなんぞや?
気分がいいので、できるだけ良心的な解釈を試みよう。愚かさを悪意と解釈するなかれ。母方の祖母の教えである。いや、ハンロンのカミソリだったか。
- 無類の冷水好きなので人が嫌がることが頭になかった
- 運動でほてった体をアイシングしてくれようとした
- 観察力と注意力のトレーニングに協力してくれた
- まずシャワーを豪快に飲むと思った
- 冷水側にひねってから立つのが藤山流作法
- 島根では常識(おしむらくはここは東京だ)
- どっきり撮影中
- ジムが混んでるのでひとりくらい心臓麻痺で減らそうか、という社会貢献
- 前衛的芸術活動
- チベット弾圧への抗議(俺に?)
- ほんとうは爆発物によるテロを計画していた組織において、被害を少しでも減らそうと組織内部で戦った結果としての妥協策
- 彼の信仰では、他人に冷水をかけ、煩悩を取り払うことが何よりの功徳となる
ごめん、僕の良心と想像力に限界がきてしまった。
やっぱりあれは悪意あるいたずらだった。心が狭くて本当に申し訳ないが、冗談じゃすまなくなりそうな年寄りだっているジムなのだ。
今度同じことやってるの目撃したら冷水ぶっかけてやるから覚悟したまえ。それが僕流の功徳だ。