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ねこの森へ帰る

なくした夢にもどっています

ゲームアーカイブス「牧場物語〜ハーベストムーン」評。

二軒隣に住むじじいが憎い。
このじじいは、最初出会ったとき、体の弱い馬を捨てようとしていた。その様子を愕然として眺めていると、「どうせ捨てるから、やるよ」とばかりに痩せ馬を押しつけてきた。こっちも「ハムにするのは忍びない」ということで忙しい農作業の暇を見つけて世話することにした。
その後、じじいは時折やってきたが、馬のことなど見向きもしない。冷たいじじいなのだ。
そのくせ、「自分の牧場で羊大会をやるから見に来い」とかなんとか、にやついた顔でのたまわる。なんだよ羊大会って。こんな小さな町で羊見せびらかしあうののどこが楽しいんだよ。
とはいえ、この町では羊や牛を一頭買うにもすべてじじいを通すほかなく、奴の倨傲を歯がみしながら受け入れるほかない。大会には町の連中も渋々参加するが、じじいがへそを曲げないよう、適当に羊を褒めて、なんだかんだでじじいの羊が優勝、ってことにして終わる。シャンシャン、というやつだ。そして結果的に、じじいの「名誉」ばかりが肥大していく。誰かがこの悪循環を断たないかぎり終わらない。こんな羊大会は即刻廃止せよ。よく考えたら、羊大会も牛大会も、結局お前ん家の血統の家畜しかいねえじゃねえか。祭りのたびに町長の隣で名士ヅラしやがって。

……という、宿屋で酒を飲みながらつぶやいた陰口を誰かに聞かれたらしく、ああ、だからこういう狭い町は嫌いだ、じじいの耳にあっという間に届いたらしい。

すぐにじじいが俺の家にやってきて、せっかくなついてきた痩せ馬を、「かわいがりかたが足りない」とかいう難癖をつけて連れて帰りやがった。「動物への愛が足りないと牧場なんかできないのじゃ」的な説教を付け加えて。何様だお前。度量が小せえ狒々爺め。後日じじいの家に行ったら馬はもういなかったので、おそらく、ハムだ。合掌。

さらに、この前、よせばいいのにまたじじいの家に立ち寄ってみたら、まだ5歳にもならないような孫娘に、自分ちの雌犬とうちの犬との交尾を見せていた。目を疑う。この家は孫娘と変態爺の二人暮らしだが、大きな事件になる前に早めに通報したほうがいいんじゃないのか。

ちなみに、孫娘の両親はどちらもおらず、孫娘にそのことを聞いても口を閉ざして語ろうとしない。これも謎だ。あいつの家の庭を掘り返してみたら何か見つかるんじゃないか。白骨、とまでは行かないだろうが(奴の家には飼料をつくるための破砕機のような物はいくらでもある)、重要な手がかりぐらいは。最近の科学捜査はどんなに古くて少量の血痕も見逃さないというし。
この町にも警官はいるが、記録を見る限り、何も働いていない。おそらく、じじい−町長ー警察、は癒着しているだろうから、証拠が見つかったとしても一筋縄では行くまい。ヘタに通報でもしようものなら、夜闇に乗じてうちの牧場に証拠品か何かを隠されかねない。死んだ祖父の土地に入植してきてまだ2年弱、俺はこの町では新参者だ。やってもいない殺人の罪をかぶる羽目になることは容易に想像できる。どんなに否定したところで、おそらく、町ぐるみの隠蔽工作が行われるに違いない。表向き優しくしてくれているワイナリーのおしゃべりオバハンだって、ひとたびそうなれば手のひらを返したようにじじい側の手先となるだろう。信用はできない。

信用できるといえば、町病院の受付の女か。この夏、花火大会の時にちょっといい仲になったこともあって「嫁にもらうならこいつかな」と内心では思っている。草競馬の景品のブレスレットをプレゼントしただけで大喜びするような単純な女だが、向こうもその気がないわけじゃないようだ。でも、そいつだって完全に信用するというわけにはいかない。ちょっと目を離せば、元カレらしい町医者とよりを戻しかねない。俺だって、嫁に行くならうだつの上がらない農家なんかより、地位も知性もある医者のほうを選ぶ。

そんなわけで、今、この町で一番信用がおけるのは、妖精さんだ。
妖精さんは素敵だ。家でとれるハチミツやリンゴをちょっと分けてあげるだけで、畑仕事を手伝ってくれる。黄色い妖精さんはワインが大好きだ。俺が寝てる間にちゃんと作業が終わっている。けなげで、何より、俺をあざむかない。

町の他の人の畑には妖精さんは来ないようだ。おそらく、妖精さんはこの町の心のゆがんだ人間のおてつだいはしたくないのだろう。ああ、えらいぞ妖精さん。
……幻覚? そんなことはない。図書館の蔵書に妖精さんに関する記録があるのが何よりの証拠だ。この図書館の司書をしている女の父親が書いたものらしい。自分の著作だけで図書館を建てた狂人のいうことなど信用はできないだろうが、こと妖精さんに関しては、俺が見たのと同じだ。木こりの家のそばに秋になると生えるまだらのキノコを食べれば、妖精さんの声はもっとはっきり聞こえるようになるらしい。試したい。

今、牧場は秋の収穫シーズンを迎えた。忙しくて睡眠時間が削られている。妖精さん3人と、じじいを倒す計画を相談しながら、夜中まで収穫作業だ。
ほーら、妖精さんの大好きなハチミツだよー。


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牧場物語〜ハーベストムーン」は、箱庭としてよくできているよ。よくできているから、プレイヤーが病んでいると、世界が病んで見えるよ。あ、今気づいたけど、少しネタバレしているよ。

http://www.bokumono.com/series/harvest/hmb/

この冬イチオシのゲームだよ。あ、イチオシは「アストロノーカ」なんで、ニオシだよ。農ゲー好きだよ。携帯では「成金農園」やってるよ。イチオシもニオシも古すぎるよ。じゃ、また来年。