ねこの森へ帰る

なくした夢にもどっています

ペンギンは日本人が滅ぼした

今からちょうど50年前の今日、1月14日、南極に置いていかれた「タロ」と「ジロ」が生きているのが見つかった。「南極物語」で知られる例の樺太犬である。

タロとジロは、生還後も新しい犬たちと共に南極調査にかり出されたらしいが、時折、ごく気軽にペンギンを狩ったそうな。凄味のある話だ。誰にも語られることのないワイルドな一年の記憶が、タロとジロの精神には深く刻まれているのだ。すごく腰の低い職場の先パイが、相変わらずのさわやかな笑顔で営業から帰ってくると、あらあら、汗だくでYシャツが透けちゃってますよ先パイ、おや、背中にカラフルなグラフィックが透けて見えますぞ、あー、これはー、鬼子母神だねえ、どうやら聞いちゃいけない過去をお持ちなんだー、みたいな経験、誰でもありますよね。ないんですか。そうですか。僕はありました。
他の犬も付き合いにくかったろう。「ジロさんマジハンパねぇっす、笑いながら生のペンギン喰ってんすよ」「普段優しいっすけどー、タロ先パイ怒らしたらマジやべーじゃないですかー」とか、陰で口々に語ってたに違いない。

考えてみれば、南極なんて地上にはそれほど外敵がいるでもないから、寒ささえなんとかなってしまえばペンギン食べ放題の野犬天国である。人間が犬を持ち込んでその土地の在来種を絶滅させたケースは、フクロオオカミやらドードーやら、枚挙にいとまがない。ちょっと間違っていたら、「ペンギンは日本人が滅ぼした」みたいな汚名をかぶるところだった。

そんなこんなで、現在では、南極に犬を持ち込むことはできないそうだ。物語の生まれにくい世の中になったものである。

あんまり面白くならなかったので、最後にうんちくを。
タロとジロには「サブロ」という名の弟がいた。
すごく嘘っぽいトリビアなので気に入っています。