ねこの森へ帰る

なくした夢にもどっています

駝鳥

筒井康隆に「駝鳥」というショートショートがあったのを、今突然思い出した。たぶん『笑うな』という短編集に入っていると思う。

駝鳥が飲み込んだ懐中時計の見返りとして、駝鳥の肉を要求して砂漠を生き延びる男の話だ。最後は駝鳥は骨と懐中時計だけになって歩き続けるのだ。そしてついに街が見える。オチはもうこの時点で予想できるでしょうから言いません。そう、それです。

私はこれを読んで以来、駝鳥の肉を食うときには見返りが必要な気がしてならないでいる。牛肉や鶏肉を食うときには何も感じないのに、駝鳥には復讐される気がするのだ。

私は駝鳥のたたきが大好きだが、金時計をあげた記憶はないので、きっと駝鳥に肉をついばまれて死ぬことになるのだろう。覚悟はしている。昔の女に街でとつぜん刺されることについても、もちろん覚悟している。

駝鳥と昔の女と、どっちが先に私を殺すのだろうか。