ねこの森へ帰る

なくした夢にもどっています

ドミノ堂だより

彼女との東北旅行の最終日、レンタカーの返却時刻まで少し時間があったので、ちょっとだけ寄り道してドミノ大社に向かう。一度は行ってみたかった神社だ。


ここでは皆、ドミノを並べて願掛けをする。大きな望みであるほどいっぱい並べないといけない。「交通安全」は10枚、「受験合格」あたりだと50枚、「安産」で100枚ぐらいが相場か。もちろん、より強く願いたい人はもっと並べればよい。


境内の一角には「ドミノ堂」と呼ばれる3層ほどの広い広いお堂が建てられており、願い事のある人たちが並べたドミノが雑然と並べられている。半数以上はもう倒れてしまっているが、数ヶ月前に並べられたであろうにまだかろうじて立ち並んでいるドミノも見つけることができる。


暗いお堂の奥の方に目をこらせば、一木彫りの大判のドミノや螺鈿細工の施された立派なドミノもある。きっと信心深いお金持ちが商売繁盛を願って奮発したのだろう。このご時世にずいぶんと景気がいいものだ。


私たちが使うのはそんな伝統工芸品のような高級ドミノではなく、社務所で10個500円で売っているプラスティックの奴だ。今のところ取り立てて願掛けするようなことはないけれど、せっかくわざわざ来たのだからと、お堂の隅の方のあいたスペースに10個のドミノを並べる。一緒に来た彼女も、私とは別の隙間を見つけてドミノを並べるが、途中で既に並べてあったドミノを少し倒したりしている。「きゃー」……そんな不器用な彼女が、私は嫌いではない。彼女との関係が少しでも長く続きますように……と願いながら、残りのドミノを並べる。


大みそかには、宮司さんと巫女さんが一斉に、ドミノ堂にあるドミノを倒してゆく。カラカラカラ……と小気味の良い音が境内に響き渡る絵は、酒田市の年末の風物詩だ。「ゆく年くる年」で生中継されることも多いから、目にしたことのある人も少なくないだろう。ドミノ大社の近くに三代住むコスミック団十郎さん(68) *1 によれば「この音を聞かないと年を越した気がしない」そうだ。
境内には、地元の有志によって10年ほど前に建立された芭蕉の句碑もある。


からからと 深雪騒がし ドミノ堂(だう)(芭蕉)


中学校の教科書にも載っていた有名な句だが、芭蕉も聴いたであろうドミノの音に耳そばだてながら読むと、格段と趣深い。


JR酒田駅より車で20分ほどの静かな神社です。年末年始には送迎バスも出るそう。山形に旅行することがあれば、是非一度足を運んでみてはいかがでしょうか。

*1:「コスミック団十郎」というのは、私が小学生の頃コミックボンボンで連載していたガンプラ漫画、などではなく、実在のよく切れる包丁である。http://www.ippintei.com/page918.html

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