王様と床屋とその妻
すると、王様は床屋にこう言った。
「もし余の耳がロバの耳であることを誰かに告げたら、お前の首を刎ねてやる。もちろんお前が匿名でやってるブログにも書くのではないぞよ」
床屋はため息をつきながらこう言った。
「私のブログは私の美しい妻との変態的性行為の日常を綴るブログなんです*1。仕事のことなんて退屈ですから書くわけないじゃないですか」
王様はがっかりした。人は、余が思っているほど余のロバの耳に興味はないものなのか。余にとっては自我の存亡に関わる極めて重要なカミングアウトであったというのに。
城に帰った王様は、勢いでひみつブログを開設した。ブログのタイトルは「俺の耳はロバの耳!」。けれどアクセス数はびっくりするほど少なかった。
同内容の記事を「はてな匿名ダイアリー」に投下してみたら、「増田は自意識過剰すぎる」という旨のブコメが殺到し、「『増田は自意識過剰すぎる』と言っているブコメってなんなの」というブコメも殺到した*2。王様はまたしても落胆した。余が構ってほしいのはそこじゃない。あと、余の名字は増田じゃない。
そして気づいた。そうか、余は単に、構ってほしかっただけであった! 自我とペルソナ性についてしちめんどくさい理屈を並べたりなどせず、早く気づくべきであった、余はリアルライフで寂しかっただけであった!
さすが名君ミダス王*3、自覚するのはそこらへんの凡人よりも素早かった。
その後、ブログ「俺の耳はロバの耳!」は、海外のエログロ動画を紹介するブログに姿を替え、そこそこの人気を博することになるのだが、その話は長くなるので、またいつか*4。
あ、そうそう、ロバの耳は、おそるおそるお妃様に見せてみたところ「似合うじゃん。かわいいし」と案外好評だったので、早々に隠すのをやめた*5。