ねこの森へ帰る

なくした夢にもどっています

私はもう大人になってしまった

私はもう大人になってしまった

 

たとえば今日『風の谷のナウシカ』を観た

子供のころは

「僕がナウシカだったらどうやって世界を救おう」

と思って観ていた

もう少し年をとると

「ユパさまのような剣術の達人になりたい」

に変わった

もう少し年をとると

「僕がアスベルだったらどうやってナウシカにアタックしよう」

「いや、隣で寝てるんだからおっぱいぐらいもんじゃえよ」

に変わった

もう少し年をとると

クシャナの夫になって、『もっと恐ろしい物』というのを見てみたい」

「いや、夫になるのは面倒そうな女だから週刊ポストの袋とじとかでいいや」

「それもめんどうだから誰かスキャンして違法アップロードしねえかな」

に変わった

 

そして今日『ナウシカ』を観た感想は

「俺の娘が王蟲の幼虫を抱えて帰ってきたらどうしよう」

そういうシーンがあるのだ

どうしよう

犬猫ならともかくグソクムシみたいな奴だ

そもそも何食うんだ

ムシゴヤシってなんだ

それ、月いくらぐらいかかるのか

娘が最後まで世話をすると思えない

大きくなったらますます捨てにくくなる

割と大きくなるんだろう、あれ

いつもなら反対に回るはずの妻はなぜか娘派につき

「かわいいわねえ」などと娘と一緒に黄金の触手を撫でている

蟲を飼えば夫婦の会話が増えるとでも期待しているのか

確かに増えるかもしれないが私の時間は減る

もうすでにうっすらと疑われている例の浮気相手に割く時間が

やはり娘が飽きたぐらいに近所の森に捨てに行こう

娘は泣き、妻は私をますます疑うだろうが

なんとか言いくるめなければならない

そうだな

「蟲と人とは同じ世界には住めないのだよ」

とか

社会派を気取れているじゃないか

「蟲と人とは同じ世界には住めないのだよ」

これが私の『風の谷のナウシカ』を観た感想です

 

私はもう大人になってしまった

うそです

ほんとうの大人は『ナウシカ』なんて観ないんです

私には妻もなく娘もなく

金曜ロードショーの『ナウシカ』だの『ラピュタ』だのを観るたびに

ツイッターでペジテだバルスだとつぶやいている者です

「ああ、日本に酸の湖があったら確実に自殺の名所だ

 今すぐ入水しに行きたい、今すぐに」

二十年もそう思い続けて『ナウシカ』を観ている者です