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【電書フリマZ販売書籍紹介】『阿佐ヶ谷ドクメンタ』

11月14日、新宿ネイキッドロフトで行われる「電書フリマZ」。ここに出店する「ショップ佐々木あらら」全6冊のラインナップを、1冊1冊紹介していきます。→電書フリマZの最新詳細情報はこちら


ショップ佐々木あらら「字が すくない ほん」ラインナップ紹介その2

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【電書情報】

書名:『阿佐ヶ谷ドクメンタ
短歌・企画:青木麦生
撮影:馬込浩一郎
企画協力:佐々木あらら
定価:200円(ePub版・PDF版込み)



短歌の発表場所に街を選んだということは
60年代に隆盛を誇っていた
フルクサスと呼ばれる活動(日本ではハイレッド・センターなど)や
寺山修司の市街劇が好きだったので
それらの影響を受けているのかもしれない
 ――青木麦生「でんごんくんプロジェクト あとがき」より

http://aomugio.jugem.cc/?eid=316


●笑ったら死ぬと宣告されたけど松尾スズキの芝居が観たい
で、枡野浩一から「ヤラレタ。」という評をもらったこともある歌人・青木麦生。
●釜飯がエレベーターに乗っていた最上階でもまだそこにいた(青木麦生)
という自作を「リアリズムだ」と主張してはばからない奇人・青木麦生。
 青木麦生のアーリーアダプターを自認する佐々木あららが何としても関わりたかった処女歌集が、いよいよ刊行されます。


 歌集といっても、収録短歌はたった6首。
 自作短歌を分解し、阿佐ヶ谷の街じゅうに文字シールとして貼りつけてゲリラ撮影した、世にも稀な歌集です。
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 この写真、一見すると撮影後にフォトショップで画像加工したようですが、実際は、シールを一文字一文字切り出して、道路や煙草に貼りつけて撮っています。そう、青木麦生という人は、知る人ぞ知る「短歌貼りつけパフォーマー」なのです。
 2007年、杉並区中の134カ所の掲示板に自作短歌134首をいっせいに掲示する「でんごんくんプロジェクト」をゲリラ的に敢行してからというもの、垂れ幕状の短歌を陸橋に掲げてみたり、イタリアのお祭りでマリア像に手書きの短歌を貼りつけたり、ブログ上ではだいたい年に1回くらいのペースで短歌貼りつけのパフォーマンスが発表されています。
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 発表される短歌も奇妙なテイストのものばかり。

●青ならば進めで赤が止まれだと知った途端に便利になった
●ガソリンを君の車に入れたなら僕はひかれてしまうんだろう
乳酸を上腕筋に注入し筋肉痛を楽しんでいる

 こんな風に、日常を生きながら日常生活の常識を守らない人物ばかり出てきます。

 青木麦生の目指す方向性は、おそらく、「日常世界」と「詩(短歌)の世界」との国境を危うくさせることなのでしょう。日常の中の常識性のねじれを描く短歌を得意とする青木が、路上貼りつけという手法で「日常世界」の側からのゆさぶりを求めるということは、言われてみれば辻褄が合うようにさえ思えます。
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 一方で、アートを路上へ持ち出すという手法は、彼自身も語っている通り、寺山修司赤瀬川原平が40年も前に日本へ導入し、使い古されたものでもあります。青木はその歴史を踏まえつつ、当時とは時代状況のまったく変わった21世紀に、あえて再度その方法論を選びました。彼らの情熱を情熱としてではなく短歌の持つ静謐さとして引き取り、寡黙に粛々とゲリラパフォーマンス活動を続けているのです。「寡黙な過激派」。そこが青木麦生という歌人・アーティストのそこしれぬ不気味さであり、期待してしまうところです。

自分としては、60年代のような反体制的な思想など持ち合わせておらず
ただただ、(中略)ゲームに興じていただけでした。
ちなみに、寺山の市街劇の代表作『ノック』は
阿佐ヶ谷を舞台として行われたそうです。
 ――前出記事より

http://aomugio.jugem.cc/?eid=316

 電書『阿佐ヶ谷ドクメンタ』は、青木麦生のルーツでもある「阿佐ヶ谷」をキーワードに、未発表作を含む青木麦生の短歌を阿佐ヶ谷の街や人に貼りつけた作品集です。撮影は阿佐ヶ谷在住のアマチュアカメラマン、馬込浩一郎。企画協力は阿佐ヶ谷生まれ、阿佐ヶ谷育ちの佐々木あらら。3人の阿佐ヶ谷人が、まるで寺山の霊に呼ばれたかのように、ゲリラ撮影を敢行いたしました。電子書籍なのに全体から昭和の匂いがするのは、たぶん、寺山のせいです。

 寺山が市街劇『ノック』を発表した35年後に、同じ阿佐ヶ谷に黙々とシールを貼り続けた男、青木麦生。彼を含めた阿佐ヶ谷組でつくりあげた「処女歌集」、青木麦生独特の無口で狂った世界をぜひお手にとって味わってみてください。